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トークン設計の肝!仮想通貨の定義を捉えよう!

▼ノルウェーにバックパックで旅をしたときだった。道端で一匹の猫と戯れていると、目のかゆみ、鼻のムズムズ、くしゃみが止まらなくなった。猫アレルギーであることを忘れていたのだ。20カ国以上旅してきて、あれほど死にかけたことはない。

▼ブロックチェーン技術を利用した『CryptoKitties』というゲームがある。イーサリアムネットワーク上で猫のデータをやりとりするDAppsだ。これなら猫アレルギーも関係ない。その『Cryptokitties』で昨年12月、一匹の猫が当時のレートで1,300万円を超えるETHでやりとりされた。

▼『Cryptokitties』のCryptoは暗号を意味する英語だ。その基盤となっているのが暗号技術だからである。仮想通貨の法規制を議論していた当初、Virtual currencyと呼ばれており、それに対応する形で仮想通貨として定義された背景がある。しかし現在ではCryptocurrency、つまり暗号通貨という名称が一般的になった。先日金融庁が発表した『仮想通貨交換業者の中間とりまとめ』では、仮想通貨ではなく暗号資産という名称で統一表記されている。

▼通常仮想通貨、暗号通貨と呼ぶとき、両者が区別されることはほとんどない。法規制の観点から言えば現行法で定義されている仮想通貨が問題となる。平成29年4月に施行された改正資金決済法では、仮想通貨は「1号仮想通貨」「2号仮想通貨」の2つに大分されている。

▼世界シェアの60%を日本人が占める仮想通貨の代名詞ビットコイン、スマートコントラクトや独自のブロックチェーンプラットフォームを提供するイーサリアム、そしてコインチェック事件で約580億円相当が流出したNEM。これらは「1号仮想通貨」に該当する。

▼近年新たな資金調達手段としてICOが流行の兆しにある。プロジェクトのホワイトペーパーを公開し、投資家に対してトークンを発行するものだ。IPOよりはるかに簡易に、そして迅速に資金調達が実現できる。このトークンは「1号仮想通貨」と交換できる設計にした場合、このトークン自体が「2号仮想通貨」に該当する。

▼先日仮想通貨の金融商品取引法による規制が検討されているというニュースが出た。金融庁によれば「そのような事実はない」とのことであった。しかし仮想通貨が決済としてではなく、投機としての役割が大きいとなれば、金融商品取引法の適用を受けるのは時間の問題であろう。いずれにしても仮想通貨の今後の法規制から目が離せない。

行政書士 小川 裕史

解説

資金決済に関する法律(資金決済法)における仮想通貨の定義

(定義)

第2条5 この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

(「資金決済に関する法律」の条文より)

(1)仮想通貨

① 以下のすべての性質を有する財産的価値

a 不特定の者に対して代価の弁済に使用でき、かつ、不特定の者を相手に法定通貨と相互に交換できる

b 電子的に記録され、移転できる

c 法定通貨又は法定通貨建ての資産ではない

② 不特定の者を相手に上記①と相互に交換できる財産的価値(上記b・cを満たすもの)

(「第1回仮想通貨交換業等に関する研究会」資料より)

上記の①を「1号仮想通貨」、②を「2号仮想通貨」と言う。

1号仮想通貨の該当性について

☆以下のすべての性質を有する財産的価値

a 不特定の者に対して代価の弁済に使用でき、かつ、不特定の者を相手に法定通貨と相互に交換できる(可換性)

<観点>(金融庁 事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 16仮想通貨交換業者関係より)

・「発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか」

・「発行者が使用可能な店舗 等を管理していないか」

b 電子的に記録され、移転できる(仮想性)

c 法定通貨又は法定通貨建ての資産ではない(非法定性)

【例】1号仮想通貨:ビットコイン、イーサリアム、NEM、ライトコイン 等

2号仮想通貨の該当性について

☆以下のすべての性質を有する財産的価値

a 不特定の者を相手に「1号仮想通貨」と相互に交換できる財産的価値

<観点>(金融庁 事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 16仮想通貨交換業者関係より)

・「発行者による制限なく、1号仮想通貨との交換を行うことができるか」

・「1号仮想通貨との交換市場が存在するか」

b 電子的に記録され、移転できる(仮想性)

c 法定通貨又は法定通貨建ての資産ではない(非法定性)

【例】2号仮想通貨:カウンターパーティーコイン、トークン 等

(注)前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「ブリペイドカード」や、ポイント・ サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)における「ポイント」は、これらの発行者と店舗等との関係では上記①又は②を満たさず、仮想通貨には該当しない。(金融庁 事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 16仮想通貨交換業者関係より)

仮想通貨の該当性については、その利用形態等に応じ、最終的には個別具体的に判断することとされているため、事業展開に当たっては専門家や金融庁に確認することを強く薦めたい。