▼先週金融庁主催の仮想通貨交換業等に関する研究会が最終回を迎えた。今回はこれまでの議論のとりまとめとして、金融庁から報告書(案)が示された。
▼仮想通貨ビジネスを展開する事業者にとって、最も関心があるのはICO規制だろう。報告書(案)にはマルタのVFA法のような法律を創設するのではなく、スイスのようにコインやトークンの性質を鑑みて分類し、既存の枠組みをベースに対応する方向性が示された。分類方法は「投資型」、「その他権利型」、「無権利型」の3つを示している。
▼なお問題がある仮想通貨の取扱いについて、匿名性が高くマネーロンダリングの温床になるものやリスクの高いものは、金融庁や自主規制団体、仮想通貨交換業者が連携して取扱わないこととする。コインやトークンの設計をする際には、この点も考慮する必要がある。
▼またウォレットサービスのみを提供する事業者も、広く仮想通貨カストディとして規制の対象となりそうだ。これまでウォレット業者は、資金決済法上の仮想通貨交換業の定義には当てはまらないとされてきたが、モナコイン流出事件に代表されるウォレット業者の危険性を鑑み、仮想通貨交換業者と同等の規制が課されていく。
▼そして、「仮想通貨」という呼称を「暗号資産」で統一するという。改正資金決済法の起案当時は国際的に「Virtual Currency」と呼ばれており、国内でも「仮想通貨」という呼称が一般的であったが、現在は国際的には「Crypto Asset」が使用されている。
▼その他顧客資産の管理・保全について、ホットウォレットで管理する仮想通貨相当額以上の純資産及び弁済原資の確保、国内取引の8割以上を占める仮想通貨デリバティブ取引に対する規制、利益相反や価格操作、過剰広告に対する規制等が報告書(案)に記載されている。いずれにしても多くの点において、金融商品取引法を参考にしていることから、金融商品取引法の理解も欠かせない。
▼研究会では有識者の賛成意見が大勢を占めたが、行政コストに見合わない対応をすべきではないとの声が複数上がった。つまり160社超の新規登録申請業者すべてを審査の俎上に乗せることはせず、財産要件を引き上げる等で母数を減らすべきということだ。
▼金融庁は今月中に報告書(確定版)を公表する方針で、来年の通常国会での法案化を目指すものと思われる。自主規制団体も仮想通貨交換業予備軍である第2種会員の募集を開始しており、まもなく会員登録第1号が出てきそうだ。長く停滞していた日本の仮想通貨交換業が大きく動き出そうとしている。
解説
<「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第11回)配付資料>