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地域経済活性化の特効薬!電子地域通貨の可能性を探る!

▼1999年、個人消費促進や地域経済活性化を目的として、地域振興券が発行された。予算約7,700億円とも言われるその政策について賛否両論あるところだが、少なくとも持続可能な仕組みではなかったようだ。

▼近年、地域振興券の電子版とも言うべき「電子地域通貨」が流行の兆しにある。ブロックチェーン技術を導入した電子地域通貨もあることから、仮想通貨と並んで語られることもある。しかし、加盟店契約で不特定性を排除していること、法定通貨建資産であることから、電子地域通貨は資金決済法上の仮想通貨には該当しない。

▼今月初旬、横浜DeNAベイスターズが運営するCREATIVE SPORTS LABのトークイベント「地域通貨の可能性を探る」が開催された。「横浜スポーツタウン構想」を掲げて、街づくりに取り組む横浜DeNAベイスターズは、地域経済活性化を目的とした電子地域通貨「BAYSTARS coin(仮)」の開発を進めている。このイベントでは、「BAYSTARS coin(仮)」のユーザーシーン体験も設けられた。

▼「電子地域通貨は、お金の地産地消だ」。そう話すのは日本政策投資銀行の坂本広顕氏。電子地域通貨は、法定通貨建資産であるため価格安定性を保持し、地域限定であるため地域外への資金流出を抑止し、時間経過で減価する仕組みであるため消費活動を促進することができる。

▼長崎県内の複数のしま市町で共通に使用できるプレミアム付き商品券「しまとく通貨」というものがある。「島外からの資金流入を目的とした地域通貨であるため、島外在住者のみの利用となっているが、旅行会社111社434商品とタイアップして、長崎の離島を知らない人の島旅の動機付けになっている」と、しま共通地域通貨発行委員会の久保雄策氏は言う。

▼価値が貯蔵できない、つまり保有していると価値が目減りしていくとなれば、価値がなくなる前に使用してしまおうというインセンティブが働く。この思想は、100年前のドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルの「減価貨幣」にも見られる。過去の思想が最新の技術によって体現されるのは、実におもしろいことだ。

▼日本には43兆円のタンス預金が眠っていると言われている。これは日本の一年間の税収に相当する。将来の不安に備えて貯金する、すると経済が停滞するため税金が上がる、するとますます将来が不安になり貯金する…。「減価貨幣」は、この悪循環を断ち切る特効薬になるのだろうか。

▼電子地域通貨は、例えば特定のスポーツリーグやチーム、コミュニティー内に限定するといったように、その設計の自由度が高い。一方で電子地域通貨の種類が増加すれば、ターゲットとなる利用者にダブりが生じ、電子地域通貨間でコンフリクトが起こる。いかに電子地域通貨の環境を整備していくのか、今後の電子地域通貨から目が離せない。

解説

<CREATIVE SPORTS LABトークイベント「地域通貨の可能性を探る」レポート>

http://www.baystars.co.jp/thebays/news/20181114-01.html

<「フィンテックと地方創生/坂本広顕」論文>

https://www.vmi.co.jp/jpn/bestvalue/pdf/bvextra/bvextra_04.pdf