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ICO規制の在り方を金融庁主催の研究会から探る!

▼「好きな男性のタイプは?」と聞くと、「優しい人」とか「好きになった人がタイプ」とかと返ってくる。私は生まれてこの方、優しい人が嫌いな女性に出会ったことがない。これまで好きになった人の共通点を類型化してほしいという意図は、はかなくも伝わらなかったらしい。

▼人を好きになったり、モノを買ったりするとき、まず先に感情がくる。そして、その感情で意思決定したことを後になって正当化する。正当化には、感情というかたちのないものを言語化し、類型化する作業を伴う。そのため、的確に“正当化”するのはとても難しいことだ。

▼先週、仮想通貨交換業等に関する研究会が金融庁で開催された。論点はICO規制。ICOはクロスボーダーで行われる資金調達手段の側面を持ち、世界的な規制動向を踏まえて足並みをそろえた対応を検討すべきという点において、一定のコンセンサスがある。

▼しかし、具体的な規制案については、意見が割れている。仮想通貨やトークンを特別視せず既存の規制フレームワークに当てはめるべき、狙い撃ち規制をすると規制逃れが懸念されるため包括的に規制をかけるべきといった具合だ。

▼ICOで発行されるコインやトークンの種類、その機能は様々だ。それらを言語化し、類型化する作業はとても難しく、それゆえ各国の分類方法や規制方法も異なる。

▼スイスの財務省・連邦金融市場監督機構FINMAは、トークンをPayment Tokens、Utility Tokens、Asset Tokensの3種類に分類し、Utility Tokensの一部とAsset Tokensを証券規制の対象としている。

▼マルタでは、トークンをVirtual Tokens、Virtual Financial Assets、Electronic Money、Financial Instrumentsの4種類に分類し、Virtual Financial Assetsに関してVFA法により仮想金融資産規制をしている。

▼このような事例から、レギュレーションはイノベーション戦略の一環であるという側面が見えてくる。その意味で「世界的な規制動向を踏まえて足並みをそろえる」とは、最低限の規制やガイドラインに適合するものであれば、各国の戦略に委ねても良いのだろう。

▼「なぜICOを行うのか。IPOやクラウドファンディングが、資金調達手段として利用しづらいからなのか。だとすれば、それらの規制緩和も併行して検討が必要なのではないか」。このような発言をした有識者もいた。

▼ICOを実施する日本の事業者にとって、資金決済法上の仮想通貨に該当しないようにするため、どのようなトークン設計をしたら良いか、というのは大きな関心事である。しかし、規制対象外であることを「正当化」するために規制があるわけではない。「なぜICOを行うのか」。この根源的な問いについて、真摯に向き合う時期に来ているのではないか。

解説

金融庁は『仮想通貨交換業等に関する研究会』における議論の進め方について、次の通り述べている。

ア) 交換業に係る規制
(支払・決済手段、投機対象としての側面)
イ) 仮想通貨を原資産・参照指標とするデリバティブ取引に係る規制
(投資・リスクヘッジ手段、投機対象としての側面)
ウ) ICOに係る規制
(投資・資金調達手段、投機対象としての側面)

(第6回 配付資料 資料3参照)

今回は上記のうち ウ)ICOに係る規制を取り上げた議論であった。

<「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第8回)配付資料>

https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181101.html