▼旅を終えて日本への帰路につく空港。手元にはわずかばかりの現地通貨。空港で何とか使い切ろうとしたり、使いきれぬまま持ち帰ったり。両替するときレートやコミッションにこだわっていたはずなのに、結局有効に使い切れず。そんな経験のある人も少なくないのではないか。
▼オランダのスキポール空港では、仮想通貨ATMなるものが期間限定で試験的に設置されている。現地通貨が手元に残ってしまったときに、この仮想通貨ATMで現地通貨を仮想通貨に両替することができる。これなら空港で要りもせぬものを購入したり、外貨を引き出しに眠らせたりすることなく有効に使うことができる。
▼国境を越えて取引される仮想通貨の種類は増加の一途をたどり、世界の主要取引所で取引されている仮想通貨は2,000種類を超えたと言われる。その一方で、日本の仮想通貨交換業者の取引所で取引されている仮想通貨は30種類程度に留まる。現行法で投機対象として位置づけられていない仮想通貨への当局の慎重な姿勢が表れている。
▼日本の法定通貨は世界的に見ても非常に安定している。だから仮想通貨が日本の法定通貨に代わって果たそうとしている決済機能とは何なのか、疑問を抱く者は少なくない。実際のところ、日本における仮想通貨は投機対象としての役割が大きい。
▼しかし自国の通貨に不安を抱く国では、決済手段としての仮想通貨への期待は大きい。ジンバブエではハイパーインフレを起こし、自国の通貨がただの紙屑同然になってしまった。中国では、偽物の品質は本物よりもいいと揶揄されるほど、偽造された通貨が横行している。このような背景から両国では、仮想通貨への期待が急速に高まり、結果として政府や中央銀行が仮想通貨禁止令を発出する事態となった。
▼またヨーロッパでも決済手段としての期待は大きい。シェンゲン協定を締結している各国間は出入国が自由であり、国境を越えた通貨の移動が頻繁に行われる。ユーロを導入している国同士であればいいが、通貨の両替が必要であれば、その度ごとに手数料を取られてしまう。この問題を仮想通貨が解決するのだ。
▼仮想通貨が決済手段として機能するために、度々ボラティリティが問題視される。その問題を解決するために、ドルを預託することで発行されるTether、原油資源にペグされたベネズエラ政府主導のPetroといった、通称ステーブルコインと呼ばれるものも出てきている。仮想通貨は投機目的、そのように結論付けるには時期尚早なのかもしれない。