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仮想通貨デリバティブ取引とは?金融庁主催研究会の議論!


▼「我に支点を与えよ。されば地球をも動かさん」。古代ギリシアの数学者アルキメデスの名言だ。力点と支点の距離を長く、支点と作用点の距離を短くすれば、大きな重量をも簡単に持ち上げることができる。てこの原理を端的に表現した言葉だ。

▼一昨日、仮想通貨交換業等に関する研究会が金融庁で開催された。今回の論点は、仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引だ。日本仮想通貨交換業協会によれば、仮想通貨デリバティブ取引が、仮想通貨交換業を通じた国内の仮想通貨取引全体の約8割を占めているのだという。

▼仮想通貨デリバティブ取引の中でも、半数近くの仮想通貨交換業者で導入されているのが、仮想通貨証拠金取引である。仮想通貨FXと言った方がなじみ深いという人もいるだろう。少額の証拠金で多額の仮想通貨取引を行う、所謂てこの原理を利用した取引だ。

▼力点が証拠金、力点と支点の距離がレバレッジ倍率に当たる。つまりレバレッジ倍率が高ければ高いほど、作用点にある利益を簡単に上げられることになる。ただし、力がマイナスの方向に働いたときは、いとも簡単に損失を被ってしまうことには注意が必要だ。

▼多くの主要国で仮想通貨デリバティブ取引は金融規制の対象となっているのに対し、日本では法律の抜け穴のような形で金融規制の対象外となっている。抜け穴と表現したのは、仮想通貨が金融商品ではなく、決済手段として位置づけられているからに他ならない。

▼「仮想通貨を決済手段として利用しているのは、マネロンだけではないか」。以前ある政治家がこのように揶揄していた。インターネットを介して世界中で取引できる仮想通貨の性質を鑑みて、世界的な規制の動向を注視して、歩幅を合わせねばなるまい。

▼仮想通貨デリバティブ取引は、投機目的での仮想通貨利用を助長しているとの指摘もある。あくまで決済手段としての仮想通貨を重視して、価格を安定させるための規制をかけるのか、はたまた投機目的としての仮想通貨を重視して、新たな金融規制に舵を切るのか、まもなく当局としてのスタンスが明らかになりそうだ。

▼「すべてを発見したと主張する人でも、再現性がなければ、実際に不可能なことを発見したつもりになっている」。アルキメデスはこのような言葉も残している。仮想通貨デリバティブ取引の儲け方を喧伝する者もいるが、億り人の中から多くの戻り人が出ていることを忘れてはならない。

解説

金融庁は『仮想通貨交換業等に関する研究会』における議論の進め方について、次の通り述べている。

ア) 交換業に係る規制
(支払・決済手段、投機対象としての側面)
イ) 仮想通貨を原資産・参照指標とするデリバティブ取引に係る規制
(投資・リスクヘッジ手段、投機対象としての側面)
ウ) ICOに係る規制
(投資・資金調達手段、投機対象としての側面)

(第6回 配付資料 資料3参照)

今回は上記のうち イ)仮想通貨を原資産・参照指標とするデリバティブ取引に係る規制を取り上げた議論であった。

<「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第7回)配付資料>

https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181019.html