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顧客資産をいかに守るか?金融庁主催の研究会から見る動向!

▼「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」。ドラえもんの登場人物ジャイアンの有名なセリフだ。理不尽さを覚えるこの言葉は、なかば独裁主義者を揶揄する言葉として広く認知されている。

▼これまで仮想通貨交換業者及びみなし業者に対して、幾度となく行政処分が下されてきた。その中には、顧客資産と自己資産の分別管理ができていない、顧客資産を私的流用しているとの指摘を受けたところもあった。「おまえのものはおれのもの」と言わんばかりの管理状況にあったのだ。

▼今月3日、『第6回仮想通貨交換業等に関する研究会』が金融庁で開催された。そこで論点の一つに挙げられていたのは、顧客資産をいかにして守るのかということだ。これまでの巨額流出事件において、コインチェックは自己資産で、テックビューロは自己資産と外部支援で補償している。しかし、今後第2のマウントゴックスが出ないとも限らない。

▼流出事件はほとんどの場合、ホットウォレットで管理された仮想通貨がターゲットになっている。すべての仮想通貨をコールドウォレットで管理すればいいのではないか、そう考える人もいるだろう。しかし、そんなに単純な話ではない。

▼コールドウォレットにすると、仮想通貨の流動性が低下する。つまり取引承認までに時間を要し、刻一刻と価格が乱高下している仮想通貨を適切なタイミングで売買できないリスクがあるのだ。

▼また、コールドウォレットはサイバー攻撃に対しては効果を発揮するが、社内犯に対しては脆弱である。今年8月に金融庁が公表した『仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング中間とりまとめ』によれば、仮想通貨交換業者の役職員1人につき約33億円の顧客資産を預かっている。ネットワーク上の目に晒されないところで管理されていれば、横領を企てる役職員が出てくるかもしれない。

▼いかなるリスクもゼロにすることはできない。しかし、顧客資産は預り資産である以上、弁済できない事態は避けなければならない。そのため、今回の研究会で指摘されていた仮想通貨交換業者の財産的基礎引き上げ、金銭信託や保険加入の義務付けといったリスク軽減対策について、今後も議論していく必要がある。

▼冒頭のセリフには、実はあまり知られていないストーリーがある。ジャイアンがのび太の無くしたモノを一緒になって探した、そのときのセリフなのだ。「おまえのものはおれのもの、だから一緒に探すのは当たり前だろ」と。他人事を自分事として捉える、仮想通貨交換業者に求められているマインドセットを垣間見た気がした。

解説

金融庁は『仮想通貨交換業等に関する研究会』における議論の進め方について、次の通り述べている。

ア) 交換業に係る規制
(支払・決済手段、投機対象としての側面)
イ) 仮想通貨を原資産・参照指標とするデリバティブ取引に係る規制
(投資・リスクヘッジ手段、投機対象としての側面)
ウ) ICOに係る規制
(投資・資金調達手段、投機対象としての側面)

(第6回 配付資料 資料3参照)

今回は上記のうち ア)交換業に係る規制を取り上げた議論であった。

<「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第6回)配付資料>

https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181003.html