▼女心と秋の空。変わりやすい秋の空のように、女性の気持ちは移り気である。盛り上がった飲み会の明くる日、LINEの返事がイヤに素っ気ない。そんな経験をした男性は少なくないはずだ。あると思っていた「脈」は、どうやら「不整脈」だったらしい。
▼ビットコインのチャートを見るたびに、そんなことを思い出す。平成29年12月に最高値230万円を突破したビットコインは、わずか2日後には100万円以上も価値が下落した。ビットコインをはじめとする仮想通貨のボラティリティの高さは、あるときは億り人を生み出し、またあるときは破産者を生み出している。
▼日本における仮想通貨は、平成29年4月に改正施行された資金決済法で初めて法的な位置づけを得た。仮想通貨は、投資の対象としての金融商品ではなく、決済手段として位置づけられたのである。改正資金決済法施行から1年が経過、ビックカメラ全店でビットコイン決済が可能になったり、仮想通貨決済専門のECサイトが誕生したりと決済手段として使用されている一方で、未だ投機としての役割が中心となっている。
▼仮想通貨やブロックチェーンに関連する事業を行う会社では、ICOやトークン設計が最大の関心事になっている。取り扱うトークンが資金決済法上の仮想通貨に該当すれば、仮想通貨交換業として登録しなければならず、膨大な金銭的、時間的コストを必要とするからだ。しかし資金決済法上の仮想通貨に該当しないようにすれば足りるという単純な問題ではない。
▼トークンは前払式支払手段、為替取引、二項有価証券に該当する可能性を孕んでいる。そのいずれかに該当する場合、それぞれ法律に定められた対応が必要になるのだ。トークン設計だけではなく個人情報保護法やGDPR、犯罪収益移転防止法、出資法等々、仮想通貨やブロックチェーンに関する事業を行う際には多岐にわたる法令に留意しなければならない。
▼日本の法定通貨である円は、世界的に見ても信用が高く、何の問題もなく機能している。資金決済法で定義された仮想通貨が、法定通貨に代わって果たそうとしている役割は何なのか、検討の余地は十分にあるはずだ。
▼異常気象が頻発しているこのご時世、もはや秋の空は変わりやすいものの代名詞ではないのかもしれない。5年後のことわざが「女心とビットコイン」にならぬよう、取り巻く法的環境の安定が待たれる。
行政書士 小川 裕史
解説
仮想通貨・ブロックチェーンに関連する法規制
・資金決済法
・割賦販売法
・貸金業法
・金融商品取引法
・保険業法
・銀行法
・犯罪収益移転防止法
・外為法
・国外送金等調書法
・個人情報保護法
・マイナンバー法
・電子帳簿保存法
・公的個人認証法
・電子署名法
・金融商品販売法
・特定商取引法
※上記の他多数の法令が関連してくる。